本記事の概要
インフラエンジニアとして業務に行う場合、各機器(サーバやネットワーク機器)の異常を早期発見して、対処することが求められます。
本記事では、サーバやネットワーク機器などの稼働監視で使用するzabbixというソフトウェアをインストールする手順を記載します。
今回は前の記事でインストールしたVirtualBox上にCentOSをインストールして、その中にzabbixをインストールすることを想定しています。
※本記事の作成日(2021年2月27日)時点での動作確認をしていますが、Webページなどが更新されている可能性があります。適宜読み替えてください。
以下のようなイメージで作成します。
ソフトウェアの構成
- VirtualBox(※)
- CentOS 8 Stream
- Zabbix 5.0LTS
- Apache (Webサーバ用のソフトウェア)
- MySQL (データベース用のソフトウェア)
※VirtualBoxのインストール手順は以下の記事をご確認ください。
https://security-blog-it.com/22/
Zabbixとは
zabbixとは、サーバやネットワーク機器を監視するためのソフトウェアです。
オープンソース・ソフトウェアとして開発されているため、無償で使用することができます。
zabbixでは、ping監視、通信ポート監視、OSの性能監視(CPU、メモリ、ディスクI/Oの負荷)、サービス監視、ログ監視など様々な監視をすることができます。
CentOS Stream 8のインストール手順
- ブラウザを起動して、以下のCentOSのダウンロードサイトにアクセスします。
https://www.centos.org/centos-stream/ - 「CentOS Stream」の「x86_64」をクリックします。
- いずれかのURLをクリックして、CentOSのisoイメージをダウンロードします。
- ダウンロードが完了したら、「CentOS-Stream-8-x86_64-YYYYMMDD-dvd1.iso」があることを確認します。(YYYYMMDDは年月日です。)
- Virtualboxを起動して、「新規」をクリックします。
- 「名前」、「タイプ」、「バージョン」の3つの値を設定して、「次へ」をクリックします。
- 「メモリサイズ」を設定して、「次へ」をクリックします。
以下のzabbix公式サイトに「CPUのコア数:2CPU」、「メモリ:2GB」程度あれば動作する旨の記載がありますが、今回は4GBを設定します。
https://www.zabbix.com/documentation/5.0/manual/installation/requirements - 「仮想ハードディスクを作成する」を選択して、「作成」をクリックします。
- 「VDI(VirtualBox Disk Image)」を選択して、「次へ」をクリックします。
- 「可変サイズ」を選択して、「次へ」をクリックします。
- 「仮想ハードディスクのサイズ」を選択して、「作成」をクリックします。
zabbixの環境により異なりますが、今回は「12.00GB」を設定します。 - 先ほど作成した仮想マシンを選択して、「設定」をクリックします。
- 「システム」の「プロセッサー」タブを選択して、CPUのコア数を2に変更します。
- 「ネットワーク」の「アダプター1」が有効化されて、NATが設定されていることを確認します。
- 「アダプター2」を選択して、「ネットワークアダプターを有効化」にチェックをつけて、割り当てを「ホストオンリーアダプター」に設定します。
- 「ストレージ」の「コントローラ IDE」のディスクを選択して、右にあるディスクのアイコンをクリックします。
- 読み込むisoファイルを選択し、「コントローラ IDE」の値が変わったことを確認します。
その後、「Live CD/DVD」にチェックをつけて、「OK」をクリックします。 - 作成した仮想マシンをダブルクリックして、起動します。
- 「日本語」-「日本語(日本)」を選択して、「続行」をクリックします。
- 「ソフトウェアの選択」をクリックします。
- 「最小限のインストール」を選択して、「完了」をクリックします。
不要なソフトウェアをインストールすると、ディスク容量を使用し、ソフトウェアの脆弱性が増える可能性があるため、「最小限のインストール」でインストールすることを推奨します。 - 「ソフトウェアの選択」が「最小限のインストール」になっていることを確認します。
- 「インストール先」をクリックします。
- 「ローカルの標準ディスク」を選択して、「完了」をクリックします。
- 「インストール先」のアイコンの注意マークが消えたことを確認します。
- 下部にある「root パスワード」をクリックします。
- rootユーザのパスワードを入力して、「完了」をクリックします。
- 「インストールの開始」をクリックします。
- インストールが完了するまで待って、「システムの再起動」をクリックします。
※もし起動後に、再度インストール画面が表示された場合、以下の操作を行います。
(1) VirtualBoxを起動して、仮想マシンを選択して、「設定」をクリックします。
(2) 「ストレージ」の「コントローラ IDE」のディスクを選択して、
右にあるディスクのアイコンをクリックします。
ドロップダウンメニューから「仮想ドライブからディスクを除去」を
クリックします。
(3) 「ストレージ」の「コントローラ IDE」のディスクが空になったことを確認して、
「OK」をクリックします。
zabbixのインストール
※今回の記載している構築手順は以下の公式サイトの手順を参考にして作成しています。
個人のブログは間違った記載がある可能性がありますので、zabbix以外のソフトウェアについても構築する前に、一次情報元である公式サイトを一度読むことを推奨します。
【zabbix公式サイトのURL】
https://www.zabbix.com/download?zabbix=5.0&os_distribution=centos&os_version=8&db=mysql&ws=apache
- CentOSを起動して、rootユーザでログインします。
・ユーザ名:root
・パスワード:[インストール時に設定したパスワード]
- 以下のコマンドを実行して、SELinuxが無効(Disabled)になっていない場合は無効にします。
# getenforce
← 「Disabled」以外が出力された場合、以下の手順を実施
【「Disabled」以外が出力された場合の手順】
# vi /etc/selinux/config
← 以下の矢印の行「SELINUX=disabled」を変更します。
※viコマンド実行後は、以下のキーを入力して、ファイルを編集します。
「i」で編集モードに入って、ファイルの内容を変更します。
「ESC」で編集モード終了します。
「:wq」で保存して終了します。# reboot
OS起動後、rootユーザでログインします。
・ユーザ名:root
・パスワード:[インストール時に設定したパスワード]# getenforce
← 「Disabled」と出力されることを確認します。 - 「nmtui」コマンドを実行して、ネットワークを有効化します。
「Activate a connection」を選択(※)します。
※キーボード「↓」「↑」で移動し、「Enter」を押して選択します
インターフェース名の場所を選択して、インターフェースを有効化(※1)します。
以下の状態になっていたらインターフェースが有効になっています。
・インターフェース名の横に※マークがある
・インターフェース選択時に「Deactivate」という表記になっている
その後、「Back」を選択します。
※1 キーボード「↓」「↑」「→」「←」で移動し、「Enter」を押して選択します。
その後、「Quit」を選択します。 - 「ip a」コマンドを実行して、インターフェースのIPアドレスが表示されていることを確認します。
- パッケージを更新します。
# dnf -y update
- タイムゾーンを日本に変更します。
#
timedatectl set-timezone Asia/Tokyo
# timedatectl
← タイムゾーンが「Asia/Tokyo」のことを確認 - Zabbixレポジトリのインストールするために、以下のコマンドを実行します。
# rpm -Uvh https://repo.zabbix.com/zabbix/5.0/rhel/8/x86_64/zabbix-release-5.0-1.el8.noarch.rpm
# dnf clean all - Zabbixサーバ構築に必要なソフトウェアをインストールために、以下のコマンドを実行します。
# dnf install -y mariadb-server
# systemctl start mariadb
# systemctl enable mariadb
# dnf -y install zabbix-server-mysql zabbix-web-mysql zabbix-apache-conf zabbix-agent - データベースの作成するために、以下のコマンドを実行します。
# mysql -uroot -p
Enter password:
← 何も入力せず[Enter]を押すMariaDB [(none)]> create database zabbix character set utf8 collate utf8_bin;
MariaDB [(none)]
> create user zabbix@localhost identified by '[任意のパスワード]';MariaDB [(none)]
> grant all privileges on zabbix.* to zabbix@localhost;MariaDB [(none)]
> quit;# zcat /usr/share/doc/zabbix-server-mysql*/create.sql.gz | mysql -uzabbix -p zabbix
- Zabbixサーバのデータベースの設定するために、以下のコマンドを実行します。
# vi /etc/zabbix/zabbix_server.conf
→最後の行に「DBPassword=[先ほど設定したパスワード]」を追記する。 - PHPを設定するために、以下のコマンドを実行して、以下の箇所を変更します。
# vi /etc/php-fpm.d/zabbix.conf
変更前 : 「; php_value[date.timezone] = Europe/Riga」
変更後 : 「php_value[date.timezone] = Asia/Tokyo」 - 各種サービスの起動と自動起動の設定するために、以下のコマンドを実行します。
# systemctl restart zabbix-server zabbix-agent httpd php-fpm
# systemctl enable zabbix-server zabbix-agent httpd php-fpm - zabbixで使用する通信ポートを開放します。
# firewall-cmd --add-port=10051/tcp --zone=public --permanent
# firewall-cmd --add-port=80/tcp --zone=public --permanent
# firewall-cmd --reload - ブラウザを起動して、zabbixの管理画面にアクセスします。
zabbixの管理画面のURL : http://[zabbixサーバのIPアドレス]/zabbix - 「Next Step」をクリックします。
- すべての項目がOKになっていることを確認して、「Next Step」をクリックします。
- 「Database port:3306」、「Password:[設定したパスワード]」を入力して、「Next step」をクリックします。
- 「Next step」をクリックします。
- 設定した値を確認して、「Next step」をクリックします。
- インストールが成功した旨のメッセージが表示されていることを確認して、「Finish」をクリックします。
- 「ユーザ名:Admin」、「パスワード:zabbix」を入力して、「Sign in」ボタンをクリックします。
- ダッシュボード画面が表示されることを確認します。
【補足】 zabbixによるSNMP監視の設定
もしzabbixサーバを用いてSNMP trapを用いた監視をする場合、本手順を実施する必要があります。
本手順はzabbixの公式サイトである「https://www.zabbix.com/documentation/2.0/jp/manual/config/items/itemtypes/snmptrap」を参考にして作成しています。
(1) 以下のコマンドを実行して、zabbixでSNMP監視をするために必要なパッケージをインストールします。
# dnf install -y net-snmp net-snmp-utils net-snmp-perl
(2) 以下のコマンドを実行して、SNMP trapを処理するためのスクリプトを格納します。
# dnf -y install wget tar
# wget https://cdn.zabbix.com/zabbix/sources/stable/5.0/zabbix-5.0.9.tar.gz
# tar zxvf zabbix-5.0.9.tar.gz
# cp -p zabbix-5.0.9/misc/snmptrap/zabbix_trap_receiver.pl /usr/local/bin/
(3) 以下のコマンドを実行して、スクリプトの実行結果のログの格納先を設定します。
# vi /usr/local/bin/zabbix_trap_receiver.pl
【変更前】
$SNMPTrapperFile = '/tmp/zabbix_traps.tmp';
$DateTimeFormat = '%H:%M:%S %Y/%m/%d';
【変更後】
$SNMPTrapperFile = '/var/log/snmptrap/snmptrap.log';
$DateTimeFormat = '%H:%M:%S %Y/%m/%d';
(4) 以下のコマンドを実行して、スクリプトに実行権限を付与します。
# chmod +x /usr/local/bin/zabbix_trap_receiver.pl
(5) 以下のコマンドを実行して、スクリプトのログ格納場所のディレクトリを作成します。
# mkdir /var/log/snmptrap
(6) 以下のコマンドを実行して、snmptrapdの設定を変更します。以下の設定値は、SNMPのバージョンはSNMPv2で、コミュニティ名が「public」を使用することを想定しています。
# vi /etc/snmp/snmptrapd.conf
【追記内容】
authCommunity log,execute,net public
perl do "/usr/local/bin/zabbix_trap_receiver.pl";
(7) 以下のコマンドを実行して、snmptrapdサービスの起動及び自動起動をします。
# systemctl start snmptrapd
# systemctl enable snmptrapd
(8) 以下のコマンドを実行して、SNMP trapの送信テストを実行すると、ログファイルに格納されたことを確認します。
# snmptrap -v 2c -c public 127.0.0.1 '' .1.3.6.1.6.3.1.1.5.3
# cat /var/log/snmptrap/snmptrap.log
⇒SNMP trapのログが出力されることを確認します。
(9) 以下のコマンドを実行して、zabbixサーバ側でSNMP trapの受信を有効にします。
# vi /etc/zabbix/zabbix_server.conf
【変更前】
# StartSNMPTrapper=0
【変更後】
StartSNMPTrapper=1
(10) 以下のコマンドを実行して、zabbix-serverサービスを再起動します。
# systemctl restart zabbix-server
(11) 以下のコマンドを実行して、SNMP trapのポート(161/udp)のファイアウォールを開放します。
# firewall-cmd --add-port=161/udp --zone=public --permanent
# firewall-cmd --reload
(12) 以下のコマンドを実行して、ログローテーションを有効にします。
# vi /etc/logrotate.d/snmptrap
【設定内容】
/var/log/snmptrap/snmptrap.log {
daily
rotate 20
compress
delaycompress
missingok
notifempty
}
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